横浜にプレイパークを創ろうネットワーク


  シンポジウム「生きる力」を育むには?
〜放課後の居場所 子どもの視点に寄り添ったスタッフのあり方





日時:2012年7月13日(金) 10:00〜11:30

会場:かながわ県民サポートセンター2Fホール

パネリスト:
  池田一彦(横浜市こども青少年局 青少年部放課後児童育成課長)
  河上順子(NPO法人 YPCネットワーク理事)
  峯尾真一(NPO夢・とんぼ事務局長 放課後キッズクラブ事業 統括指導員)
  笹井宏益(国立教育政策研究所 生涯学習政策研究部)

司会:瀬嵐(NPO法人 YPCネットワーク 理事)

記録:山尾(NPO法人 YPCネットワーク プレイリーダー)



<配布資料> ※をクリックすると資料をご覧になれます
(※1)放課後指導育成施策基本指針の概要
(※2)基本指針の中身
(※3)補足資料
(※4)YPCネットワーク2011年度調査概要版
(※5 )YPCネットワークリーフレット2012 表面 3MB
(※6 )YPCネットワークリーフレット2012
 中面 8MB
(※7)本牧なかよし公園出張プレイパーク2011年11月
(※8)放課後キッズクラブ パレット通信2012年7月号
(※9)「放課後の居場所/子どもの視点に寄り添ったスタッフのあり方」





司会: みなさんおはようございます。本日は「『生きる力』を育むには? 放課後の居場所 子どもの視点に寄り添ったスタッフのあり方」というシンポジウムに申し込みいただきありがとうございます。こんなにたくさんの方たちが横浜の未来と子どもたちのことを考えてくれていることを大変うれしく思います。それではYPC、横浜にプレイパークを創ろうネットワーク理事長の橋本よりごあいさつを申しあげます。

(司会)瀬嵐 (YPC理事長)橋本

橋本: おはようございます。横浜は子どもたちが、すくすくいきいきのびのび育つようにいろんな工夫をしてきています。私たち横浜にプレイパークを創ろうネットワークでは子どもの放課後の居場所の日常がどうなっているのかという調査を昨年行いました。その調査の結果を踏まえて、横浜の子どもたちの放課後の居場所を良くしていくための話し合いや研修が必要ではなかと考え始めました。それで本日の会を開催する運びとなりました。
 まず、こども青少年局から、横浜市が子どもたちの放課後をどのように考えているかという、一番大事な骨組みのところをお話していただきます。そのあとに調査を踏まえ、YPCネットワークの河上からお話します。それから、学童保育から放課後キッズクラブに転換して放課後の子どもの居場所を事業として展開している峯尾さんから、人を育てる、人の関わりが大事だという視点で、どんな仕組みを作っているか、研修をしているか、毎日毎日をどういうふうに育ち合う視点を持っているかをお話していただきたいと思います。
最後に笹井先生からスタッフの研修について、こんな方法があるよねということを、今日使えるようなスタッフの研修の考え方についてお話をしていただきたいと思います。
 こんなに多くの方に集まってもらって、子どもの学校以外での、家庭以外での子どもの遊び場に関わっている人たちが一堂に会すのはなかなか難しいことだと思います。できれば、今後みなさんとネットワークを組んでいくスタートの会にしたいと考えていますのでよろしくお願いします。
司会: ではシンポジウムを開催いたします。
まず、横浜市こども青少年局 青少年部放課後児童育成課長の池田さんよりお話をしていただきます。よろしくお願いします。
  
池田: みなさんおはようございます。こども青少年局 青少年部放課後児童育成課長の池田です。本日はYPCネットの方の熱意にうたれ、こちらの壇上に上がることになりました。私の方からは、今の横浜市の放課後の施策、その成り立ちについて確認のお話をさせていただきます。資料は、放課後指導育成施策基本指針の概要(※1)、基本指針の中身(※2)、それと、補足資料(※3)、この辺でお話をさせていただきたいと思います。
 こども青少年局は平成18年にできた若い局です。こども青少年局は、これまで横浜市の色々なところで取り組んでいた施策、特に子どもに関する施策を横断的に再編して作った局です。これからご説明するこの基本指針は、こども青少年局ができる直前に子育て支援事業本部が平成15年に作られたのですが、そのときに策定されたものです。今のこども青少年局ができるときに、私どもの放課後児童育成課の事業としては、それまで教育委員会が所管をしていたはまっ子ふれあいスクール、市民局が所管をしていた放課後児童健全育事業である、放課後児童クラブいわゆる学童保育、この2つの事業が統合されました。その後、放課後キッズクラブを平成16年から実施をしていますが、その3つの事業それぞれに事業目的があってやっています。それをまた、事業を実施する上で共通的なものを理念としてまとめたものが平成17年策定の基本指針です。私どもは今もこの指針に従って事業を実施しています。平成17年から既に結構な時間が経過して社会的な状況の変化もあるという中で、お話していきたいと思います。この概要の中にプレイパークが入っていません。プレイパークの成り立ちはこの指針の前から活動していますが、こども青少年局と協働するようになったのは平成18年からです。
 この概要の組み立て、いわゆる放課後の3つの事業といわれている個別の指針がありますが、まず概要版の方の意義理念、第1、第2というところですが、これまで個別な要綱を定めて実施してきた放課後児童育成施策について、全体的な基本指針、方針を定めて、実施しています。これは今申し上げた、局が作られるときに、はまっ子ふれあいスクール、学童保育と放課後キッズクラブを併せた3つの事業の大きな方向性について共通の事項を決めて行こう、というものです。事業の理念ですが、保護者の労働状況や障害の有無に関わらず、全ての子どもたちを視野に入れています。事業のポイントとしては、子どもの視点に立った事業であるということ。たとえば放課後児童クラブ(学童保育)は、働いている保護者の方を対象とした事業ですけれど、子どもにとってというところは、全ての子どもたちを視野に入れた事業であるということです。それと、放課後、私たちの範囲は、1年生から6年生の小学生です。学年の違い、今は学校でも縦割り活動と言われて実施されていますが、はまっ子ふれあいスクールがスタートした平成5年には、まだまだそこは一般的ではなかったのですが、年齢の違う子どもたちが一緒に交流するということがひとつ。そこに地域の方のお力をお借りする。そういう活動を通じて子どもたちの社会性や自立心を養っていく。そのときに、保護者の方を始めとする市民の方と行政が協働していく、ここが基本的な理念です。
ちょっと前後しますが、個別事業の指針、下の段ですが、第7放課後キッズクラブ、第8はまっ子ふれあいスクール、第9放課後児童クラブ(学童保育)、この3つの事業それぞれに共通する事業全体の方針として、3から6、それと10の地域のネットワークの推進。これが全ての事業に共通します。第7の人材の確保と養成。放課後の事業、私もこの仕事をして4年目になるのですが、いつも出てくるのは人の話です。全ての事業で、いい人はいい事業をやるなあ、と常々思っています。第4としては障害児への対応。基本理念として全ての子どもたちというとらえの中で、障害のある子が参加し、それぞれが育っていく姿を見る。色々条件として厳しい面がありますが、理念としては非常に素晴らしいなと思います。それと運営主体。これは支える人たち。それと、安全確保と活動。私は、はまっ子ふれあいスクールがスタートした平成5年のときに、教育委員会で生涯学習支援センターの開設担当をしていました。同じ所ではまっ子ふれあいスクールの開設をしていたのですが、そのときモデル事業で実施したときにはまっ子の活動の中で肥後の守、ナイフを使って工作をして、子どもが指を怪我してしまったんです。とても学校も心配をしたのですが、そのとき印象に残っているのは、子どもが怪我をするということは、ない方がいいんだけれども、ナイフを使うことの意味を学ぶことはとっても大事ですということを、学校も保護者も理解していただけて、モデル事業のときも、スムーズにスタートした記憶があります。本当に安全の中で子どもたちがどう育っていくのかというところで、子どもたちが危険や事故から自らを守る力を備える、このはまっ子ふれあいスクールがスタートしたのは、この意味も大きくあります。言葉足らずですが以上です。
   
司会: ありがとうございました。それでは、次はNPO法人YPCネットワークの河上より、放課後の居場所調査の報告を致します。
河上: おはようございます。調査については、はまっ子、キッズクラブ、学童保育の各施設には、既に本日の資料と同じ概要版(※4)をお送りしています。調査の全容・詳細に関しましては、見たいという方はYPCにお問い合わせいただければ報告書の閲覧が可能です。
 放課後の居場所調査は去年9月に実施しました。はまっ子、キッズクラブ、プレイパークで、それぞれ子どもたちが一日、どんな風に遊んでいるかを、調査員を募って、一日密着して写真を撮りながら、どういう遊びがどういう風に展開していくかを見ていったというのがこの調査の内容です。そのことで、はまっ子、キッズクラブ、プレイパークでの遊び方にそれぞれ少しずつ特徴があり、子どもたちに関わるスタッフの在り方というのも少しずつ特色があることが見えてきました。
 たとえばはまっ子だと、地域のお母さんがはまっ子のスタッフをしている場合が多いのですが、小学校1年生に上がりたてで、まだ親御さんと長時間離れる経験が少ない子どもたちというのは、まるでお母さんに甘えるようにべったりと手を握ったり、「お話を聞いて」と言ったり、「一輪車出してきて」と甘える様子がとても見えました。身近なところでのお母さん代わりという役割をしているという印象を第一に受けました。
 キッズクラブになると、延長で7時までお子さんをお預かりしているところが多く、おやつを出したり、他の子どもたちが5時くらいに帰ってしまった後に、ちょっとさみしくなったところでその子どもたちをまた長時間お預かりするということで、苦労と努力をされているのがわかりました。
 遊びに関しては、はまっ子、キッズクラブとも、大変多くのおもちゃ・遊具を用意していて、たとえばボードゲーム類なども多く、サッカーゲームや人生ゲームなどがたくさんある。子どもたちは3時から5時までの間でも、塾などで1時間しか居られない子、30分しか居られない子、そういう子たちでも飽きないようにたくさんの遊具で、ぱっと出してきて「あそぼっ!」って言って「わたしは30分なの」って切り上げて帰る。それから放課後、校庭や体育館を使えるようになるまでの時間が、はまっ子・キッズクラブの始まる時間より遅いところが多いので、一旦はまっ子やキッズクラブの教室に入って、「さあ3時半、4時だよ。体育館、校庭使えるよ。」と、部屋の物をいったん片付けて、施設によっては必ずお約束事として子どもたちは一度廊下に整列をして、「体育館に移動しましょう」「校庭に移動しましょう」という形で移動して、またそこで遊びを展開し、5時くらいになると「お部屋に戻る時間です」と引き上げてくる。イメージとしてはプレイパークよりも時間で遊びが区切られてしまう側面がある中、たくさんのおもちゃを用意するとか、スタッフもいくつかの教室と、校庭と体育館といった色んなロケーションについていなければいけない大変さがあることが分かりました。
 一方、プレイパークですが、本当はプレイパークについてご存じじゃない方に詳しくご説明をしたいところなのですが、本日はお時間がありませんので、こちらのリーフレット(※5 表面 3MB)(※6 中面 8MB)やホームページを後でご覧になっていただければと思います。
主に公園や緑地などを利用して放課後子どもたちが遊ぶ場所を提供しています。はまっ子、キッズクラブと違うのは、終わった後に通常の公園の状態に戻さなければいけないので、おもちゃを備え付けておくことができません。開園時刻になると、みんなでロープ遊具のブランコやハンモックを設置したりおもちゃを出したり、閉園時刻前になると全部それを撤収して全部倉庫にしまって帰らなければならないという制限の中で、主に屋外で活動しています。
 YPCネットワークというのは、横浜市各地のプレイパークをやっている団体のネットワークです。私自身は理事もやっていますが、基本的にホームベースとして、中区間門小学校という学校の施設開放を利用して活動しています。そのほかに、本牧にあるなかよし公園でも出張プレイパークをしています。出張プレイパークの様子を資料(※7)としてお配りしていますのでご覧ください。どういうことをやっているのかということは、この日一日の流れと、遊んでいる内容を写真で紹介していますので、見ていただければ分かると思います。外で、小さいテーブルを出して、はまっ子、キッズクラブと同じように、お絵描き、工作、小さい子用にシャボン玉といった入りやすい遊び、竹馬、竹ぽっくりも置いてあります。プレイパークで人気がある遊びはハンモックです。これは一年がかりでスタッフが手作りしました。2m×2mの幅のハンモックです。ハンモックがひとつあるだけで、小さい子から大きい子まで、一緒に乗って揺らして遊べますし、親子だったり兄弟姉妹だったり色んな顔ぶれで遊べます。ボードゲームなどの既製の遊びも子どもたちはとても楽しく遊びますが、すごくシンプルなこういうロープ遊具になると、子どもたちが遊び方のルールを作る、工夫して遊ぶという形になってくるので、そのあたりが面白いところだと思います。異年齢交流もとても自然にできます。ハンモックは、はまっ子、キッズクラブでは厳しいというところもあるかも知れませんが、ロープ遊具も取り入れたいとうことがあれば、私たちはノウハウを持っているので、一緒に提案していけたらと思います。一番大きい遊具がハンモックで、その他に二本のロープを上下に張っただけのモンキーブリッジ。これも、子どもたちが揺らして遊ぶということで、小さい子から大きい子まで一緒に遊びます。すずめの子が電線にとまっているように鈴なりになっている写真がありますが、こういう風に遊びます。大きい子はすごく揺らすので、小さい子は身の危険を感じますし、小さい子が危ないなと感じると大きい子は揺らし方を工夫するということで、それぞれの年齢に応じた身体能力の違いや、コミュニケーションというものが遊びを通じて交流が見られるので、私たちはロープ遊具をとても大切に思って取り入れています。ロープ遊具をすると、危険というものについてすごく勉強します。
 私たちは危険を二つ考えていて、リスクとハザードという考え方をしています。ハザードは子どもたちの命にかかわるような、遊び自体が持っている欠陥。たとえば箱ブランコで、地面との間の隙間が子どもの頭より狭ければ、はさまれてしまった事件で子どもがなくなってしまう。これはハザードとして私たちはないように徹底的に取り組んでいきます。一方で、高いところから飛び下りる、それからロープ遊具で危険を感じながら遊ぶ。これはリスクとして子どもたちがこういうリスクをどう乗り越えていけばいいのかなと勉強していく場。リスクを取り入れていくという考え方をしています。このような研修も頻繁に持っていますので、このこともみなさまと共有していけたらと思います。よろしくお願いします。
司会: それでは、NPO夢・とんぼ事務局長 放課後キッズクラブ事業統括指導員の峯尾真一さんお話をお願いします。
峯尾: 初めまして。峯尾真一と申します。私は学童保育の指導員を長年していました。その後、地域のはまっ子ふれあいスクールの事務局長ということで、転じて、その後、池田さんからお話があったように、横浜市の放課後キッズクラブを始めますよということがありまして、学童保育を保護者のみなさんが大議論の末、大口台小の中にできた放課後キッズクラブをNPO法人を立ち上げて運営しています。先ほど、橋本さんからたくさん色んなことをお話ししてほしいと言われたのですが、時間がないので要点だけお話したいと思います。
ここに、お配りした資料(※8)があります。私たちの運営している放課後キッズクラブは、パレットという名前を子どもたちと投票で決めました。そこで毎月出しているお手紙です。これは必ずスタッフがそのひと月を振り返りながら、子どもたちの様子を一人一人丁寧にピックアップして、書いているものです。これを保護者のみなさまと、学校の先生と、近隣の幼稚園保育園、そして子どもたちがこれから上がっていく中学校の先生にも、スタッフが月に一度、郵送ではなく手渡しで直接渡しに行っている。なぜかと言うと、やはり子どもが育っていく場所を作っていくのは、現場のスタッフだけでは到底できないことなので、そこには父母の協力や学校の協力、そしてもうひとつ大事なのは地域の色んな方たちの協力、具体的にはならないかもしれないがお互い顔の見える関係があるということがとても大事だと思っています。ということでお手紙を配っている。
では今日の本題のお話をさせていただきます。テーマは「子どもの視点に寄り添ったスタッフのあり方」でした。それをあらためて私の経験で振り返って考えたときに、私がずっと接してきたのは小学生の子どもたちです。小学生の子どもたちにとって放課後の時間とはどんな意味を持つのかと最近になって考えています。大きく言うと3つくらいあると考えています。おそらくこれはすでにみなさんも思っていたり、色んな研修で言われていることだと思います。繰り返しになるかもしれませんが、3つあると思っています。ひとつ目が、子ども自身が主役になっていい時間なんだよ、ということだと思います。子ども自身が主役になれる時間というのは、自分で決めていい。自分でどこへいってもいいし、もしくは自分で何をするか決めていい。二つ目はその自由な、子ども自身の時間が、出会いがあったり、発見があったり、自分で作りだしていける時間だと思っています。簡単に言えば、すごいなあ、面白そうだなと思える誰かと出会うこと。あるいは面白そうだなと思える遊びと出会うこと。その中に自分も入ってみて、あらためて自分でやってみて、自分のものとしていく。作りだす時間だと思っています。3つ目は知恵を身につける時間と思っています。簡単に言えば、真似していいんだよ、いっぱい失敗していいんだよ、と子どもたちにはいつも言います。その3つだと思っています。
知恵を身に着けていく時間ということで、具体的なエピソードで言うと、私たちキッズクラブは学校の施設の中で運営しています。大口台小の校庭には幸いにも色んな木がたくさんあります。ドングリがあったり、ヤマモモの木があったり、いちじくの木があったりと。季節になると実がなってくるわけです。学校で教わるのは知識だと思っています。ヤマモモの木があって、この木はヤマモモだと先生から教わり、花が咲いた後にはこういう風に実がなりますよと教わるのが、学校での教科書を使った勉強だと思います。放課後の時間は学校とは違うので、教科書を使って何かを教える場所ではない。自分で決めていい時間です。自分で何するかを決める時間なので、子どもたちは黙っていても、ヤマモモの実が落ちていれば、「これ食べられるのかな」と口に入れてみます。甘くておいしいな、すっぱいなとか、色んな事を自分で試してやってみるわけですね。それを見たスタッフも、じゃあジャムを作ってみよう、というふうになる。学校で教わったことを実際に自分で口にしてみる、それを使ってこういう風にしてみればジャムが作れる、パンを買ってきてそれにつけて食べてみる、次はパンを焼いてみようという風に、どんどん子どもたち自身が、これをやってみたいなあという気持ちがわき起こるような、そんなことを実際にやっていっていい時間と思っています。
そうした時間やそうした場所としてありたいなと思ったときには、そこに関わる指導員や補助指導員といったスタッフの私たちはどんな風な立ち方で子どもたちの前に立ったらいいのかということが課題として出てくると思います。ひとつは、とにかく子どものひとりひとりをまるごと受けとめてあげることです。色々な背景を背負って子どもたちは生活をしているわけです。あるいは、その日、一日の大半を過ごす学校の中で、色んなできごとを引きずりながら放課後、学童保育やはまっ子やプレイパークにいくわけですが、やはり子ども自身の、いろんなことを出してくるのを、全部まるごと受け止めたいというふうに思っています。とにかくスタッフは一緒に遊んで、子どもと一緒に感じようということと、子どもが言葉にならないけれども言いたいこと、心の中で持っていることを、よく聞いてあげよう。言葉にならなくても聞いてあげることはできると思っています。子どもたちのことをよく見ていてあげれば、聞くことはできると思います。最後は、子どもたちのそうした心模様や出来事をきちんと伝えていくことだと思っています。それを保護者やまたは先生や地域に伝えていく必要があるかもしれない。伝えてあげることで、子どもを中心とした学校の先生と保護者あるいは指導員との関係、ネットワークが作っていけると思います。
司会: ありがとうございました。それでは次は国立教育政策研究所の笹井先生からよろしくお願いします。
笹井: みなさんおはようございます。今までのお話と重なる部分があるかもしれませんが、私も子どもの教育に関わる研究者なので、その立場からのお話をしたいと思います。資料(※9)をお配りしていますが、それを見ながら話を聞いて欲しいと思いますが、子どもの育つ場所としての学校が、子どもの生活の中心となっていると思います。実は学校教育で教えている、あるいは学校教育を通して子どもに身につけさせようとしているものは、子どもが育つ部分のうちの、私に言わせると3分の1くらいの部分でしかない。さっき峯尾さんがおっしゃっていましたけれども、知識というものは学校で学ぶものですが、むしろ今日テーマになっている生きる力は学校の外で学ぶものだと思います。教育心理の学者や日本赤ちゃん学会での議論を聞いていると面白い。子どもって、ほうっておくことで、いろんなことを学んでいることが科学的な研究でも明らかになってきています。小さな子が階段の上り下りを自分なりに気をつけて、どういうふうに上ったらいいのか、下りたらいいのかを学んでいる。よく例に出されるのは、庭の水撒きで、ホースで水撒きしているとき、どういう風にホースを押さえたら水が遠くに飛ぶのかとか、こういう風に押さえたら自分に水がかかっちゃうとか、「水撒きして」と子どもに言うと、一番遠くまで一番効率的にやる方法を自分なりに考えてやってくれる。子どもってほっといてもすごく色んなことを学ぶし、そのことの積み重ねがまさに生きる力になっているということが最近よく言われるようになっています。
私が配ったペーパーを見てほしいのですが、2のところに、子どもはどのようにしたら育つのか、ということをまとめて書いてみました。自分の発想で試行錯誤を重ねて生活に順応したり生活を切り開いていくための知恵とか力というのを自然に身につけたりしていく。自然にというのがキーワードです。誰かに教えられるのではなくて、自分で考えて身につけていく。そういうふうに育っていく。あるいは2番目に書いたように、他の人との、地域のおじさんおばさんも含めての多様なコミュニケーションの中からもいろいろなものを吸い取っている。3番目は学校教育で行われていることです。子どもはほとんど経験をしていない状態で頭の中がまっさらだから、きちんと教えれば抽象的なことでも、算数や国語といった生活に直結しないものでもどんどん覚えていく。さっき3分の1と言ったのは、これらのうちの3番目しか学校では教えることができない。1番目と2番目はむしろ学校の外で学ぶべきことだと思います。ところが今の時代というのは、1番目と2番目ができる環境というのが少なくなっている。昔は道路や公園や裏山で遊ぶことができたが今はできなくなっている。むしろそれを大人が人工的に作っていかなければならない。その典型的な例がプレイパークだと思っています。3つ目に、そういった子どもが育っていく時間や空間を作っていくにはどうしたらいいかということを書いてあるんですけど、放課後の色々な事業も学校の中で行われることが多いが、子どもたちにとっては自分の発想で、自分なりに活動を実践していく貴重な時間と場になっている。今日はそういうところで関わっている方がたくさん集まってきています。みなさんに申し上げたいのは、そういった子どもの育ちを基本的に理解していただいて、そういう場を作っていってほしい。ある意味では規範を教えることは大事だが、教え込みをしないとか、管理をしないことが、そういう場を作る上でとても大事だと思う。それから、峯尾さんもおっしゃっていましたが、子どもとの関係というのは、それぞれの子どもの生活や家庭環境で全然対応が変わってくるので、一人ひとりの子どもを全て受け容れないと物事は始まらない。この子の良いところ悪いところではなく、良いところも悪いところも全部受け容れることが必要です。そうしないと個々の子どもとの関係性は作れないわけですから、子ども全てを受容していって、まず信頼関係を作るというところから、色んな遊びを共有するとか色んな支援をするとかいうことが始まるんじゃないかなと思います。4番目に、スタッフの在り方について、寄り添うことというのはすごく良い言葉だと思うんですけど、一人ひとりの子どもに即した固有の信頼関係を作っていくことがとても大切で、それをぜひ実践してほしいと思います。それゆえに、そこに関わったスタッフのみなさんはその実践を上手くできるような研修をこれから進めてほしいのですけれど、仮にそういうふうに考えると、子どもとの固有の関係というのはみんなで共有するのはかえって難しいということにもなるので、そういった個別の関係性から生まれてくるものをスタッフで共有するための工夫、例えば日誌をつけるといったようなことについて、知恵を出していくことが必要です。具体的な方法についてはまた後でお話ししたいと思います。

司会: 笹井先生ありがとうございました。それでは4人それぞれのお話を踏まえ、これよりパネラーのトークセッションを行いたいと思います。よろしくお願いします。
河上: 今たくさんのキーワードが出たと思うんですけど、池田さんにお伺いします。最初の理念であります、私もはまっ子の立ち上げのときのころ子どもが小学生だったので、色んなお話を聞いているんですけど、異年齢での遊びの場が放課後に必要だと、今、子どもたちはアポイントメントを取らないと、お友達と遊べない。公園に行っても知り合いがいないとか、塾があって知ってる子と会えないとか異年齢の子どもと放課後そのまま遊べるスペースがあればというお話からはまっ子が始まったように思うんですけれども、その異年齢というのがはまっ子、キッズクラブ、学童保育、プレイパークを含めて、想定していたところからどれぐらい実現したのかというお話、あと地域との交流というものの目指していたものと今の現状というものについて行政の方から今思ってらっしゃること、今後目指していきたいことをもう少し補足をしていただいていいですか?
池田: 先ほど、はまっ子のスタートの平成5年のときは私もそばで見ていたのですが、そのときの問題意識としてもすでに、転んだときに手をつけない子がいる。異年齢の環境を当時議論していたのですが、子どもたちはギャングエイジですから当然、自分たちで、お兄ちゃんが年下の子を連れた、ガキ大将が昔はいたというような話をしてたイメージがあります。お兄ちゃんが子どもの面倒をみる。小さい子はお兄ちゃんの姿を見て育っていく。そういう関係性が必要ではないかという議論をしていました。地域との関係で言うと、はまっ子のスタートは子どもの育ちなんですが、学校・地域・家庭でいうと、地域の力を借りて子どもを地域で育てていくんだ、ということが基本的な関係性です。その中でおやじの会ができたり、子どもたちの活動を支える広がりというのは地域的にばらつきがありますが、全体的には進んでいる。パレットの運営をしているのも地域で立ち上げたNPO。みなさんが法人格を取って子どもの育ちを支えている。YPCネットもそうですが、色々な形で地域の方たちが携わっていく姿は、はまっ子のスタート時点と比べるとかなり成熟してきていると思います。
河上: ありがとうございます。地域の力を現場に入れるということでは、峯尾さんところが良い事例がいっぱいあるかと思うんですけれど、学校施設は施設開放の対象としても横浜市が見直しをしていて、色んな団体があって、そことトラブルを起こさないようにとか住み分けの問題も出ているかと思います。そちらのキッズクラブではそこに来た中学生と子どもたちが交流をしたりとか、地域のボランティアが入ったりとかの事例があると思います。そのあたりのお話をお願いします。
峯尾: 学校開放との関連では、文化スポーツクラブという団体が運営しているが、基本的には小学生のための放課後キッズクラブを平日の放課後は優先的に使わせてもらっているので、住み分けについては特別に課題はない。文化スポーツクラブの方には、評議会という、地域の方たちが私たちの活動を評価してアドバイスしてくれる組織があってそこに入ってもらっている。そこで私たちの活動内容の報告などをしている。地域の方とのコミュニケーションがそこで取れているので、基本的には学区の子どもたち優先にしようということで了解が取れている。中学生もパレットに来て遊ぶ。今週は私たちの学区の神奈川中学がちょうど個人面談の期間で、部活動がないところがあるので、子どもたちもぷらぷらしている子がいて、よく遊びに来ていた。この辺も、学校との暗黙の了解でやっている。あまりきちっきちっと詰めていっちゃうと、色んな約束事ができてしまうんですけど、放課後校庭に遊びに来た中学生には、パレットに行ってきちんと受付をしなさいと学校で指導してくれる。それをこちらも踏まえて、やって来た中学生には、必ずしも私たちのところを卒業した子たちではないんですけど、こちらのスタッフが声をかけていく。「よく来たね」という風に。なんとなくの間合いを取りながら、一緒に「野球がやりたいなら、小学生の子どもたちに教えてくれるかな」というようなスタッフの声かけ・スタンスで交流を持っていく。そうしたことをやることで、学校が、中学生が校庭に入って遊ぶことをだいたいは嫌がるはずのところを、パレットのスタッフが彼らと関わることで安心感を持ってもらえて、柔軟にやれている。そこはパレットのスタッフが中学生にこちらから関わりを持っていくところがあると思います。
河上: ありがとうございます。現場によっては、そのあたりの学校や施設開放の団体とのコミュニケーションに悩んでいる団体もいて、パレットの事例を聞いて羨ましいなあと思っている人もいっぱいいると思います。峯尾さんからたくさん良いキーワードをいただきました。子どもたちが自分で決めていい、真似していい、失敗していい。これは、プレイパークがお株を取られたと思ったのですが、私たちも常日頃思っていることで、子どもが主役ということをやっていきたい、自分たちで工夫して作りだしていきたいと思っています。
先ほどの事例で素晴らしいと思ったのは、今は放射能の問題などがあって、校庭にあるものを勝手に口に入れるのはどうなのと、聞いていて思った方もたくさんいると思います。プレイパークでも、よく落ち葉のたき火をしていたのを、その問題があって測定機を入れようかという話が去年から出てきています。その中でも、パレットでは、子どもが自分でチャレンジしたい、ヤマモモを口に入れる、それを今度はジャムにしてみよう、次はパンを焼いてみようと進んでいく、これは素晴らしい取り組みだと思います。プレイパークでもこういうところが基本で、子どもがやりたいと思ったことを私たちがどこまで寄り添って、たとえば地域に「子どもたちがこういうことやりたいと言っているので、やらせたいんですけど」と子どもの代弁者になったり、あるいはそれを行政がだめと言ったときに、「ではどうしたら実現できますか?」と交渉していく、子どもの代弁者であるというふうにを私たちは考えています。
スタッフが毎日固定で入っていると、昨日こういう話題があって、こういうふうに解決したよとか、地域に出ていってこうやって交渉したよということがどんどん進んでいくんですが、地域のお母さんたちが世話人をしていて入れ替わり立ち替わり入るので、そこまで意識の共有ができないことがあります。そこでプレイリーダーを雇って、常勤で毎日現場に入ってもらい、お母さんたちをつないで推進力になってもらう、ときには行政との交渉の場にも出てきてもらっています。峯尾さんのところでスタッフ間での意識の共有や進め方について、工夫していることを少し伺えますか。
峯尾: 工夫しているというところでいえば、みなさんも活動の記録は必ずつけていると思いますが、それは基本だと思います。でもそれは一枚の紙でしかないので、回し読みをするのも難しいので、指導員とスタッフが集まる時間を、子どもとの活動の時間以外にきちんと確保している。始まる前と終わった後に、こんなことがあったということをスタッフ間で話をしている。それぞれのスタッフでいろんな視点、感じ方を持っているので、きちんと出し合って、こんな方法でこの場所としてはやっていくということをいつも確認する。みんなが集まって話を出し合っている。
河上: ありがとうございます。毎日の振り返りに力を入れていて、翌日の始まる前には前日の振り返りをすごくされるそうなので、私たちも見習いたいと思います。プレイパークではその日に必ず、こういうことでヒヤリとかハットしたよねとか、次までにこういうものを揃えておこうねとか、ロープが痛んでいたから買い換えようねとか廃棄しようねとかいう話をする。振り返りがすごく大事だと思っています。学習と教育について、笹井先生に伺いたいのですが、私たちのように民間の集まりであったり、ボランティア同士だった場合に、意識共有や会議や、管理の視点ではなく子どもに寄り添う方にスタッフを研修していくために、何か良いアドバイスはありますか?
笹井: やはり振り返りが大事だと思います。見守るとか寄り添うとか、口で言うのは簡単だけど、それはすごく大変なことだと思います。
自分がアクティブに教えることよりも、見守ることの方が大変です。人の話を聞く。いやな話でも、我慢して聞くことは大変ですよね。自分が話した方がずっと楽なんです。でも我慢して聞いてあげることが大事です。人を自由にしてあげて、それを受け容れてあげるのはすごい大変なんですね。後で考えて、変なことを言ってしまった、変なことをやってしまったということはあるし、後になって気がつくことはたくさんある。そのことから、明日はこういうふうに変えてみようとか、こういうふうにしてみようとか、なるのだと思います。大人が学ぶというのは、自分で気がついて自分で直していくことが基本ですから、それを保障するための時間、促していくための時間というのが振り返りの時間です。それを仕組みとしてとるということは、とても素晴らしい。こういうことに気をつけましょうと誰かに言われなくても、話し合うだけでも、自分なりに気がついて、明日はこう変えてみようとつながっていくのだと思います。
同時に、先ほど河上さんがおっしゃっていたように、パートタイムで活動している方がほとんどなので、子どもについて、この子が何してるよとか、こういうことに興味があるよとか、今日は何したよ、という情報が断片的にならざるを得ない。本当はプレイリーダーのように、じっとウォッチしている人が必要なんだと思いますが実際にはなかなか難しいので、振り返りのときに情報を共有して明日の人たちにつなげていくことが大事ですし、できればそれをメモや記録に残しておいて、それをみんなで読むことが大事だと思います。
河上: ありがとうございます。私も去年の調査に挑むにあたって、今までの流れを勉強しました。横浜市の中では先ほど池田さんにお話ししていただいた通りですが、全国的にも、放課後子どもプランなどの形で、放課後の子どもの遊びを推進していこうという話が出ています。ですが、スタッフ研修を行政主体で開催したり、各団体でどの程度の研修をしているかというレポートが日本全国で上がっているのを見ると、1〜3日が多いです。たとえば、はまっ子のような団体のスタッフになるときに、「この団体はこういうことをしている、こういう場所です」「見守りはこういうふうにします」「保険はこうです」というレクチャーが半日ないし一日という形で終わってしまうことが多いですが、今、国とか横浜市では、スタッフ研修の方向性はどうなっていますか?
池田: 放課後事業は、それぞれの事業がそれぞれの研修をやっていたが、ここ2〜3年全体的に体系的に実施しようと考えているのがひとつ。まだまだ、十分でないなというとらえはしています。我々の研修はどうしても常勤の方のスタッフ研修になる。それ以外の人の方の研修は今年度始めたところですが、まだまだ不足しています。どういう視点で何を学んでもらうかという、体系的なところまでまだ行っていないというのが正直なところです。今後、もう少しその辺の詰めをしていきたいと思っています。
河上: 研修はとても大事なものですが、今のお話では、行政としては、どういう視点で何を、どのくらいの量の研修があればいいかという具体的な構想はまだないということですか?
池田: 経験則から、子どもの安全、保護者や地域や学校といった色々な関係性の構築の必要性や、安全管理の具体的なスキルとか、それぞれのメニューは持っています。ただ、受けてもらう方がどのステップにいるのか、次にどういう研修を受けてもらうのかが体系的に実施できていない。ご案内をして研修を受けてもらっており、項目としては整理されているつもりです。
河上: 研修の色んなパッケージというか、内容は用意されているけれども、というお話がありました。そうすると、現場の方が、私たちにはこういう研修が足りませんとか、足りないのでやってほしいとおもいますという声を上げていってもいい時期に来ていると思います。研修を受けるには、研修場所まで行く足代は誰が負担するのか、研修費用は誰が出すのか、講師費用は誰が出すのかと色々な問題が出てくると思います。私たちもカンパを集めています。最初はプレイリーダーに給料も出ない段階からスタートしていますが、やはりプレイリーダーという、常勤での働くスタッフにある程度生活が保証できる形で有償に持っていきたいと私たちは考えて、今行政から補助金もいただいていますが、それ以外にも、研修のための予算をどう確保するかが頭を痛めているところです。私たちが現場を良くしようと思ったときに、みんなでの内輪での話し合いはすごく大事です。でもそれ以上に、いろんなスキル、たとえば悩みを持っている子にどういう声かけをすればいいのかや、危険があるときに「ダメよ」と言うのではなく、「こっちをやってみない?」とうまくい誘導していくにはどうすればいいか。色んな気づきがあるので研修を受けたいと望む声が上がってきます。
そうすると私たちも研修に行くための予算をどうやって確保するかとか、あるいは行政に「やってほしい」と声をあげなきゃねという話になっていくと思います。うちだけではなく、パレットでも常勤スタッフを入れたいということで保護者の方がカンパといいますか自分たちで手弁当で、スタッフの層を厚くする工夫をされている話をこの間伺ったので、それをみなさんに紹介していただけますか?
峯尾: パレットには常時いる職員が4人います。横浜市の補助の水準では常時いる職員が2人。
私たちには保護者会があって、放課後の子どもたちが過ごす時間の質を少しでも良いものにしてほしいとお父さんお母さんは言います。質と言うのは活動の種類の多さではなく、つまり英語教室や太鼓教室や講座のような、お父さんお母さん方に見えやすいことをやっていくことが子どもの過ごす放課後の豊かさにつながっていくわけではないと、お父さんお母さん方は言ってくれました。何なのかと言うと、継続して子どもたちのことを見ていってほしい、一日、あるいは一週間、それが積み重なって一年間。それが6年間続いていく。継続して子どもたちの育ちを見ていって欲しい。
そのためには、常時いる人が1人でも2人でもいた方がいいということで、保護者の方たちが自主的に費用を出してくれているという工夫はしている。
河上:
ありがとうございます。これだけ教育熱が盛んな時代にあって、たとえばサッカークラブや英会話教室といえば、親は自分の子どもにどのくらいのレベルのものを与えればいいかということを必死に探して、送り迎えをし、場合によっては個人教師のお金まで上乗せして身に着けさせようとするのですが、こと遊びとか地域の人との関係性とかになってくると、やはり大切だとはみなさん思っている。去年のアンケートでもたくさんのお母さんたちが子どもにもっと地域の子どもたちと遊んでほしいとすごく思っている。だけれどもそのために自分が出ていって何かをするとか、セッティングをするとか遊びの質を考えるということになると、そこまではとてもいかないという状況がある。
私たちはプレイリーダーをあそびの専門職と考えています。遊びの専門職として、どういう働きかけをすると豊かになるか、発展性を持つかに対してすごく意識を持っている。それが遊びの質になっていっている。質を考えて、常勤で毎日子どもの様子や体調や子ども同士の関係性を見て、「昨日まで距離を置いていた子どもたちが今日はなかよくなれそうだから今日はこんな遊びを仕掛けよう」といったことが、毎日の連続性の中で見えてくると思います。この質の大切さを私たちはまだ保護者や地域に十分に訴えかけていけていない。パレットが常勤が4人というと、よだれが出る方が会場にいるのではと思いますが、そこがすごく大事だと思って力を入れているのだということでしたね。

(会場から、質問票が回ってきている。)
今、会場からいくつか上がってきているのですが、一番大きいのが予算とかお金、それからスタッフの人件費が低賃金労働ではないかという質問があります。それから「はまっ子、学童保育は運営主体が運営委員会方式なのに、なぜ放課後キッズクラブは公募の法人なのでしょうか? 運営委員会ではだめな理由を教えてください」という質問が池田さんにきています。NPO法人や民間企業を公募で募っていますが、一方ではまっ子のように、地域のお母さんや学校や周りで作っていくことをベースに考えていく形態もある中で、行政としてはどう考えていますか?
池田: 予算面も含めて難しい面もあるのですが、キッズクラブが法人というのは、一つは、参加料の話があります。運営するために、お金を徴収していく。運営委員会の方たちには本当に頭が下がる思いで、はまっ子も放課後学童保育もそうなのですが、お金の額や、お金を扱う責任の明確化というのが一つ。それと、キッズクラブをスタートさせたときに、活動の充実のために、法人の持っているノウハウ、たとえば学校法人や、社会福祉法人の保育園幼稚園、財団法人よこはまユース、といった、行政だけでない色々なノウハウを期待したというのがある。その2つが法人とした理由です。一方で、NPO法人を地域の方たちが立ち上げていく仕組みも歓迎したい。NPO法人を維持するのは大変。運営委員会同様、維持していくのが地域の人たちの力によるもの。その点、人材育成を含めて私は最近考えているのは、行政が直接支援すると行政組織が重くなるので、行政と現場で運営している方たちとの間に入る中間的な支援をする仕組みというのが、放課後には効果的だと思います。人的な現場支援を含めて、運営や研修も含めて、現場と行政の間にあるようなイメージの組織。それが地域ごとにできていくのかどうか。横浜市は大きいので。
横浜市の小学校344校、放課後児童クラブ(学童保育)が202、それを一度に全部見るというのは、現実的には、物理的に薄くなっていってしまう。そうすると地域課題に対応するために、今のイメージでの組み立てが今後求められると思います。
河上: ありがとうございます。みなさんが関心があるところをずばっとお答えいただきたいのですが、今後、予算は増える見込みがあるのか?あるいは、増やすためには私たちは何をすれば良いのか? 行政的には今後5年10年20年の見通しはどうですか?
池田: 税金をどういう風に使うかという立場で言うと、まず絶対的な横浜市のお財布というのがあります。それと、国からの補助金。国からどうやってお金を持ってくるかというのを含めて、全体の予算を組みたてます。今の社会状況から一般論で言うと、とても厳しいのはみなさんお分かりになると思います。今後の方向性として横浜市は放課後のことで言うと、未就学児の保育所の待機児童ゼロをかかげてやってきて、そういう子たちが学齢期に入ってきた。そういうことに対するお金がかかってくる。どういう風に市民の方の期待に応えていくか、それと理念の部分をどうマッチングさせていくか。その組み立てになってくるだろうと思う。毎年非常に厳しい状況の中で予算確保している。私たちなりに戦っているとご理解いただきたいと思います。
河上: ありがとうございます。やはり大幅アップも、だんだん上がるという見通しも難しそうですね。
次に、峯尾さんに質問がきています。
継続していくための人材発掘について伺いたいということなのですが、何かお話がしていただけますか?
峯尾: 人材発掘、一番難しいですね。やはり出会いでしかないです。
ただ、私たちは学童保育としてスタートして今はキッズクラブになっていて、一つの場所で長年していると、そこを卒業した子どもたちや、その当時小学生だった子どもたちのお父さんお母さんがまだ地域にいっぱいいる。そういう子どもたちが、またいずれ帰って来るようなあり方が、そのきっかけになると思う。私たちのところでは高校生や学生になった子どもたちが夏休みや試験期間に戻ってきて、一緒に活動してくれます。そこをつないでいくのは誰かキーになるスタッフが必要だと思いますが、今いる子どもたちが育っていったときに、そこに帰ってこれるようなサイクルというか、長いスパンでの取り組みをどう作っていけるかが一つの鍵になると思います。
河上: 私たちは、行政の方にどうかしていただきたいというのもありますが、今の厳しい現実を胸にとめて、さらに私たちに何ができるのかを考えていくのがすごく大事だと思います。
先ほど峯尾さんから、保護者会の形で、質を訴えて、それに対価を払ってもらって、専門のスタッフ層を厚くすることをしていると。私たちも、プレイパークでは参加は無料なんですが、カンパをもらったり、プレイリーダーカンパをもらったり、遊具のためのカンパをもらったりしている。対象が、直接の子どもの親だけではなくて、民間企業など色んなところにアプローチしないといけないと思っているのですが、一つの課題として、自分たちに必要なスタッフの層を厚くするための資金、それから研修に行くための資金を自分たちで調達することも考えていかなければならないと思います。それが難しければ自分たちでネットワークを組んで情報の共有をする、課題の共有をすることが大事だと思います。
プレイパークは18区でネットワークを組んで、メーリングリストや毎月の代表者会という形で、現場で起きた事故や保護者・利用者とのトラブルなど、共有して話し合っている。場合によっては専門の人を呼んで研修が必要だということになれば、年間計画の中で研修を組んでいくことも考えています。
私たちの組織単体ではできることが限られていますが、ここにいる200近い方たちと一緒に情報共有したり、講師を招く場を持つことが可能であれば、一人ひとりの負担が少なくて可能になるかもしれないと思っています。そのために「スタッフ研修って大事だよね」「層を厚くするために専任のスタッフを雇うような資金も必要だよね」と持ち帰って伝えるのは大変です。
笹井先生、個人のスタッフが気付きを持っても、それを所属している組織に伝えたり共有していくのは難しいと思うのですが、どういうふうに進めていけばいいですか?
笹井: さっきのお金の話や寄付、予算を増やす話は、資金調達(ファンドレイズ)の問題ととらえてもいいですが、むしろ、自分たちの成果をいかに地域の人たちに理解してもらって評価してもらうかというアプローチがすごく大事だと思います。実際にアメリカのNPOは自分たちの成果をすごい分量のペーパーにして出版しているし、色んな形で社会にプレゼンテーションしているんですね。その結果として寄付してくれる人も地域にたくさん出てくる。みなさんの活動を地域の人や保護者に理解してもらい、はまっ子やキッズクラブのファンを増やすことが、遠回りのようですが近道だと思います。予算を増やすにしても、横浜市だって、みんながそれを大事だと思っていれば、増やしやすいと思います。ファンを増やしていくために、良い活動をして、理解してもらうのが大事。
質の問題というのは、専門家的な質というのはあるが、子どもに対応するときに、真正面に立って対応するより、斜めからアプローチする方がいいと心理学ではよく言われています。それは声かけや関わりにおいて、特に初めて出会う子どもとの関わりでよく言われるが、子どもの真正面に立つと子どもが威圧感を感じてしまって、自分自身を出せないことがよくあるので、斜めに対応するのがいい。斜めから声かけして、斜めから色んな形で関わっていく。そういう心理学的なスキルの問題はあるのですが、それよりも子どもの目線で子どもの発想に共感し、遊びを膨らませていくような知恵、子どものアイデアをクリエイティブにしていく知恵はみなさんの方がお持ちで、その方が大事だと思います。
河上: ありがとうございます。残り5分を切りましたので、最後に、今のに関連して峯尾さんのところでたとえば、ヤマモモを食べたと言ったら、当然親の方から、「食べさせて大丈夫なの?」「お腹は?」と色々あると思います。情報発信力について、どうやって発信すればいいのかという質問がすごく多いのですが、峯尾さんのところでは、施設開放や学校や地域に手で通信を配りに行くなどして、地域を理解して味方につける力がすごくあると思います。そういう、子どもの視点に立ってこれが大事って僕たちは考えているよっていうのに、どういうツールや考えがあるか、みんなにアドバイスはありますか?
峯尾: 子どもたちと過ごすスタッフが今日こんないいことがあったと我が事のように話してくれる。それを私たちだけで止めておくのはもったいない。これはお父さんお母さん、あるいは学校で問題児扱いされている子どもの担任の先生に「こんな良い顔してたんだよ」と伝えた方がいいよね、というのが根っこにあります。「この子、こんな良い面を持っているんだよ」ということを伝えたい。
それを具体的にできる場所は何かといったら、月に一回、保護者に保護者会を開いてもらってそこで直接話を伝えていこうとか、お便りを直接中学校の先生に持って行って、「実は中学校のだれだれ君が最近入り浸っています。でも良い意味で来てくれているんですよ。こちらとしても、彼が居場所として大手を振って来られるようになるために、ボランティアとして扱って彼に声かけしています」といったことを、その子に関わっている誰かに伝えないともったいないというのが根っこにあります。
河上: 人を引き込むには、「予算がないんだよね」とか「今日こんな危ないことがあったんだよね」ではなく、「今日こんないいことがあった」「これだけのことができた」ということを、保護者の方が聞きたいと思うことや、学校や施設開放の人が、「それならこれをやってあげられるよ」と思えるように、プラスの発信をガンガンしていくのが良いのかなと思いました。

時間になりましたので、今日の内容で聞きたいこと、あらためて思ったことがあれば、アンケート用紙かメール、ファックスでいただければ、さらに共有してまとめて発信していきたいと思います。
よろしくお願いします。
司会: 1時間半の短いシンポジウムでした。みなさんまだまだ消化不良のまま修了の時間となり申し訳ありません。今日のシンポジウムを機会にして、子どもたちを軸にしてみんなで考えていく、みんなで力を合わせていく仲間としてつながっていけたらと思います。
4人のシンポジストの方たちにお話しいただきありがとうございました。シンポジストの方に拍手を。
何よりもみなさんの真剣なまなざしが私たちにエネルギーを与えてくれました。
またみなさんとお会いできる日を楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。



<シンポジウム当日のアンケートの主な内容>

簡単ですが、アンケートへのみなさまからの
主な回答 と集計をご報告いたします。
(「質問」「印象に残った言葉・内容」「感想」「要望・意見」などについてすべて自由筆記)
 A:池田さんの話が良かった・参考になった・もっと話が聞きたい( 5件)
 B:河上の話が良かった・参考になった・もっと話が聞きたい( 9件)
 C:峯尾さんの話(パレットの通信)が良かった・参考になった・もっと話が聞きたい( 23件)
 D:笹井先生の話が良かった・参考になった・もっと話が聞きたい( 24件)
 E:いろいろな人が子どもの放課後を考えることが大切( 7件)
 F:参加できてよかった・参考になった・是非また参加したい(14件)
 G:情報共有・ネットワーク・情報の発信方法について( 12件)
 H:地域の理解・学校等の連携が大切(10件)
  I:「生きる力を育むには」のテーマにもっと添った内容にしてほしい( 8件)
 J:(内容に対して)「シンポジウムの時間が短かった」( 7件)
 K:スタッフの待遇・身分保障についてもっと聞きたい・検討して欲しい( 3件)
 L:その他( 25件)

  ●進行について良かったという感想( 4件)
  ●進行についてもっと工夫すべきという感想(8件)
概ね「参考になった」「もっと聞きたい」「次回に期待する」などのご意見・感想をいただきました。
ご指摘としては、「時間が短すぎた」「テーマに添った内容をもっと掘り下げるべき」といった意見も多数いただきました。また「いろいろな立場の人が集まってこのように話し合うことは大切だと思った」と、多くの方から評価して頂きました。
今後の具体的に掘り下げたいテーマとして、地域や学校の理解・連携を得るための「情報の発信」なかでも「プラスイメージの発信」の必要性について、また立場を超えた情報の共有やネットワークの必要性についても多くの方から共感をいただきました。
進行については、初めて主催した大きなシンポジウムということもあり、いろいろといたらない点について、様々なご意見・ご指摘をいただきました。今後に向けて参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
今回、ログハウス・地域ケアプラザそして保護者の方等の参加もあり、アンケートにも積極的に回答していただきました。
子どもたちを取り巻くより多くの方々と今後も様々な形で、交流・情報交換できるよう提案した行きたいと思います。どうぞご協力をお願いします。

参加者:約170名
アンケート(感想・意見等):62枚
1枚に複数の内容が書かれているものは、
カテゴリー別に重複してカウントしています。
延べ件数:159件



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